夢工房・はづみん

「このままでは、いけない」――。家事や仕事で一日が終わる主婦から一念発起して、週末発明家へと華麗な変身を遂げた夢工房「はづみん」代表の波積えつ子さん。持ち前の行動力とチャレンジ精神で、自らのアイデアを製品化。見事、発明家の登竜門ともいえる発明協会でもその発明の才能は評価され、テレビの取材を受けるなど多方面で活躍中です。

――発明で起業なんて、ユニークですね。始めたきっかけをお聞かせください。

とにかく何かやろうと考えたのが今から12年前の2000年。子育てもひと段落して、自分自身と向き合える時間が増えた時期、果たしてこのまま人生を終えて良いのだろうかと言う思いがよぎりはじめました。自分の好きな仕事を一生懸命やってきて満足げな夫がまもなく定年退職を迎える一方、私はと言えば「自分は人生にどんな意味を見出すのだろう」と考えてしまう毎日。自分が満足できる何かをやらなくてはいけないと思い、起業する道を選びました。

発明を選んだ理由は、皆が困っていること、自分が不便だなと思っていることを解消していくうちに、他の人が思いつかないような新しいものを作る事が楽しかったからです。また、不便なもの・使いにくいものを見かけると持ち前のチャレンジ精神で、なんとか工夫して便利な状態にするのが得意だったというのもあります。

発明初期は、製品の企画・開発・試作はもちろんの事、手続きが複雑で大変だと言われている特許の申請も自分で必要書類を揃えてチャレンジしていました。せっかく自分で考えたアイデアですので何か形にしよう思い、特許にして残す事を考えた次第です。当時は申請だけでも相当な数を出していたと思います。

この時期に取り組んだ様々な経験は、後に製品を発売する際に大いに役立ちました。

――発明品についてお聞かせください。

日々浮かんでくるアイデアを製品化し、世の中の少しでも多くの方々に私の作った物を知っていただきたいと思い、満を持して世に出したのが「レジ前スマート」というスライド式のカードケースです。アイデアは、ホリエモンがまだ全盛期だった2004年に浮かびました。あるマスコミの取材で彼が、自分は、いわゆるお財布は持たない。これが私のお財布だといって出した輪ゴムで留めたカードの束が発明のヒントになったのです。

最近はポイントカードを発行しているお店が本当に多くて、私のお財布の中もカードで膨れ上がっている状態です。しかも、いざお会計というときになると、数十枚のカードをおもむろに取り出し、まるでトランプカードをシャッフルするように、その店舗のカードを探し出さなくてはいけない。そんなもどかしさが、私のアイデアで解消できると考えたのです。

――そこで浮かんだのが、スライド式のケースをお財布につけると言うアイデアですね。

ええ。カードをいちいち探さなくてはいけなくなるのは、カードに対してポケットの数が少なすぎるからなんです。だからお財布にカード専用のポケットを増やす方法があれば、問題は解決するなと。そこで、扇形に開く、お財布専用のスライド式のケースをイメージしたのです。

――では、そのアイデアをどうやって製品化したのでしょうか?

一般的に発明を世に送り出すには、いろいろな方法があります。アイデア商品を企画開発している企業に直接持ち込んだり、費用をかけて発明コンサルタントに製品化を手伝ってもらったり、異業種交流会でアイデアをカタチにしてくれる企業やメーカーを探したりと様々です。

私も他の方々同様、自分の発明を製品化してくれそうな企業にアイデアを持ち込んだのですが、採用されませんでした。世の中に出ていないものを商品として作るわけですからリスクを考えると企業も二の足を踏むんですね。そこで持ち前のチャレンジ精神を活かして、自分で製品化する道を選びました。

――ご自身で選ばれた道とは言え、簡単にできる事ではないですよね。どのようにして進めていかれたのでしょうか?

まず、製作予算を決めました。毎月貯金して1年間貯めた40万円があったのですが、それを切り崩して、製造原価に充てることにしました。工場に製品を作ってもらうにあたり、先方に発注する金額がこの40万円を超えるようなら止めようと思ったのです。よく小ロットと言う表現を聞きますが、実際に調べてみると最小ロッド1万枚から、なんて話はザラでしたので、型代も含めるとどんなに安く見積もっても私の予算では相当内容を絞りこまないと製品化にこぎつけるのは難しいと、素人の私でも容易に想像がつきました。 ですので「自分の出せる金額がこれだけ」と決めてしまえばコート1着買ったつもりで、これくらいまでは冒険してもいいかなと。そういう思いでまずは予算組みから入って行きました。

次にアイデアを具現化してくれる専門家を探しました。東京・大田区の産業振興協会が、個人や会社からの注文を工場や製作会社に斡旋してくれる受発注相談サービスを行なっていますが、こちらを活用してまずは試作品を作ってくれそうな企業を探していきました。私のアイデアを形にしてくれる工場とは中々めぐり合えませんでした。先の産業振興協会から更に人づてで工場を紹介してもらったり、タウンページで大田区の町工場を1件、1件当たったりと、必死でアイデアを形にしてくれるビジネスパートナーを探し続けました。今、思い返しても、気の遠くなるような進み方ですが、持ち前のチャレンジ精神と“絶対に商品化するぞ”という熱意で乗り切りました。 数十件以上当たったところ、ケースを作ってもらえる工場にやっと出会えました。個人で、しかも主婦からの依頼ということで先方は大変驚かれているようでしたが、材料の選定からいろいろアドバイスを頂きました。

まず、素材の選定で悩んでいると、「柔軟で割れにくく、中に入れたカードの色が色移りしない「ポリプロピレン」がいいのでは」 と提案をいただいたり、図面の作成も、こちらが描いたイメージ画みたいなものから精密な図面を起こしてもいただいたりと、工場の方々には大変お世話になりました。

ただ、製品の組み立てまでお願いすると、予算をオーバーしてしまうので、組み立ては自分でやることにしました。「レジ前スマート」はスライド式カードケースで、扇形に開いて、必要なカードをすぐに取り出せるのがポイントです。組み立ては当初、市販の機材で作っていたのですが、なかなかキレイに扇を開くようにスライドをしないのです。ですので、業務用の機材を購入したりしました。機材購入などで多少の出費はありましたが、試作品第一号が2005 年の3月にやっとできました。

――完成してから実際の販売に向けて取り組んだ事を教えてください

主婦が考えた発明品ですので、私自身には販売ルートが特にあるわけでもないので、まずは知名度を高めることから始めました。地方紙に広告を掲載したり、自分の勤めている職場に置いてもらったり、都内のレンタルショーケースで作品を販売したりと、とにかく色々やりました。知人のウケは非常に良く、便利だとの評価もいただいてたのですが、思うように知名度は上がりませんでした。地方紙に広告を出稿したときも、プレゼント企画まで行ったのですが、応募者数はゼロでした。満を持して製品化した“レジ前スマート”でしたが、この時ばかりは、知名度の向上と商品の販売を行うことの難しさを痛感しました。

――ではどのようにして世間に広まっていったのでしょうか

当時から今も所属している、週末起業フォーラム代表である藤井先生が「レジ前スマート」の内容をよく覚えてくれていて、2006年5月19日放映の日本テレビの『今日の出来事』(ニュース番組)の週末起業家の特集で、レジ前スマートを取り上げていただいたのです。

全国ネットで放映されたために、翌日には60件の注文があり、発送作業に追われた記憶が今も鮮明に残ってます。TVに取り上げていただいた事をきっかけに知名度も徐々に上がり、週末起業フォーラムから始まった人脈も、オンリーワンや各種ゼミナールなどに参加して更に増えたため、販路も徐々に拡大してきています。

――今後の抱負をお聞かせください

足立区役所が主催しているあだち新製品開発講座に昨年から参加しています。そこで考案したものを製品化することが当面の目標です。今年度も開発講座テーマに沿って商品化をすすめており、日常の生活の中で不便だなって思ったことを私なりの発想で形にし、世に送り出して行きたいと思っています。皆さんに喜んでもらえる様、これからも様々なアイデアをカタチにして行きたいですね。

企業情報


【企業データ】
夢工房はづみん

【URL】
http://www.adachionlyone.com/hadumin/

【代表者名】
波積えつ子さん

【起業年月日】
2000年


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